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真夏のサンタクロース-その2

そういえば、今回は本も曲もプロの人たちが持ってきてくれたので、私はもっともっと外側から見ていてもよいはずでした。

天野さんは、私に会って一目で「サンタ役ににしようと思った」と公演後に言っていました。
しかし、たしか2度断った記憶があります。
それでも「サンタ役」になってしまったのは、断る理由がどこにもなかったから。

もともと不良?出身なので中学、高校、大学とず~とロックバンドを組んでいました。
小さな小屋や学祭などで歓声や拍手をもらう快感にもう一度会ってみたいという願いもあり、引き受けたわけです。

しかし、丸腰で舞台に立つのは初めて。
25年くらい前だったら、何台もの鍵盤に囲まれた要塞のような所で暴れていました。

二十歳を過ぎたころからFree Improvisation(即興演奏)に没頭。
決め事も約束事も無く、ただただ4人で音を出し合い、互いに呼応し会い、何も無いところから何かある世界や空間を「音」で創造していた時代がありました。

天野さんの術中?にはまった時、それが何かはわからないながらも、そこに共通するものがあると気がついたわけです。

「ずいぶん舞台の上で自由に動けるようになったわね」という言葉をいただいたのは、本番前日。
全身から血液が抜けてゆくような瞬間でした。
それまで台本どおりに台詞をおぼえ、言われたとおりに動くのが舞台だと思っていたのは大間違い。

楽器をいじっていた頃は、セッション、またはジャムと呼ばれることを仲間でよくやっていました。
これに似てる。
非常によく似ている感覚でした。

ミュージカルが何百回も公演を続け、その数だけ、何度も足を運ぶお客さんがいる理由はこれでしょう。

名曲無くして名演奏あるのみ。
これはJazzの世界ですが、公演の回数だけ、繰り広げられる舞台が違うのだろうと初めて感じたわけです。

だったら同じ。
名演技はできなくても、一回きりの舞台だったら、こどもたちとできる世界があるはず。

MMCのお二人の懐は思っていた以上に深かった。
指導ではなく、考えることをさせてくれる。
よくこどもたちに言っていましたね。
「その場面では、どうすればいいの?」
「その台詞、相手が聞いた? 言うだけじゃ台詞じゃないのよ?」
「軽い! その言い方じゃ、誰かと遊びに行くのとおんなじ。どういう風に言えばいいと思う?」
ぎりぎりまでこどもを追い詰め、その限界を熟知しているしたたかなパワーをお持ちでした。
豊富な経験と踏んだ場数の量、非凡な才能がなせる技なのでしょう。
そこでこどもたちが見つけたものは、今まで誰も見つけさせてくれなかった。

それが、わかったこどもたち、それが見えたスタッフ。
公演後の涙は実に綺麗でした。

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